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どこの大学を出て何年に入社して何年目で部長になって、という「簿価」で一七〇〇万円だからです。
そこで「〇〇銀行の部長さん、四七歳ですね。
これまでにあなたの上げた業績は?そうですか、では店頭公開会社の部長、九五〇万円でいってみましょうか」という具合に鑑定 するのが、私たちです。
価格をきちんと指し値できるのがヘッドハンターなのです。
ヘッドハンターの世界こんなふうにビジネスマンの能力を商品として値づけし、動かすというのは、やはり欧米の発想です。
ですから本来の意味でのエグゼクティブサーチの会社は日本には数社しかなく、私たち縄文アソシェイツ以外はすべて外資だと言ってもよいのではないかと思います。
世界的に大きなヘッドハンテイングの会社としては、コーン・フェリー、エゴンゼンダなどがあり、それぞれ金融に強いとか、テクノロジー分野に強い、という各社の特色を活かしながら、世界的規模でビジネスマンのマーケットを作り上げているのです。
彼らは企業側の、いつどんな要請にも応えられるように、日ごろからきめ細かく自社の情報網を築いていて、どこにどんな人材がいるかをサーチしています。
こういう世界で活躍する本物のヘッドハンターは現在世界でも二〇〇〇名くらいでしょうか、予備軍を入れても四〇〇〇名くらい。
あとは「自称ヘッドハンター」ということです。
「ヘッドハンターって、産業スパイみたいなものかと思っていた」と言われたことがあります。
トレンチコートを着て、帽子で深く顔を隠しながら、「ちょっとお話があるんですが」。
マンガやテレビ、小説の世界では、ヘッドハンターはそういうイメージで登場することが多いようです。
逆に、「ヘッドハンターって、かっこいい。
頭が切れて、クールでシャープなんでしょ?」なんでありがたいイメージを持って下さっている方もいます。
でも両者に共通するのは、人間的な温かみの感じられない、無機的なイメージです。
明るいイメージもありません。
悪く言えば後ろ暗い、多少格好をつけて言えば陰があるとか。
これは「人」を「商品」として情け容赦なく右から左へ動かす仕事と思われているからでしょうか。
ヘッドハンテイングというのは日本では新しい職業のように思われていますが、H口入れ稼業は昔からあります。
そしてこの口入れ稼業の尻尾がなかなか切れずにいる人材斡旋業の人たちもいるのです。
私はこのことが、ヘッドハンターが日本でいまひとつ認知されなかった原因の一つであると思います。
女街という言葉をご存知ですか?昔若き女性たちの品定めをしては遊女として売っていた周旋業です。
現代には若い女性ではなく、働ける男たちを転がすことで儲けるおじさんたちがいます。
私は女街おじさん と呼んでいます。
日本ではヘッドハンターの代わりに、この怖いおじさんたちが暗躍しています。
この女街おじさん たちも、これまたレベルがいろいろで、経済界のトップともある程度面識があったり、経営者とツーカーで話ができたり、あちこちの朝食会にいつも出席するという人もいます。
そういう人は企業の表にも裏にも精通し、経営者の弱みまで握っていたりします。
そういう女街おじさんを頼る企業のトップもいるし、M&Aまでやってもらう事例もあります。
企業の側も人材を確保しなければならないという事情があり、両者の要求が、割れなべにとじぶた式に合致して、日本の雇用市場をあまり上等でないものにしているわけです。
また、人材を斡旋する業はほかにもあります。
ヘッドハンターの世界一つは職業安定所の代わりに、失業した人や職を求める求職者の履歴書を何十枚も何百枚も集めてきて、それをあちらこちらに、「こういう人がいますが、いかがですか」と売り歩く。
この人たちは、とりあえず新聞広告などで登録してもらい、そのレジメ(経歴書)を集めてきて、揃ったら人材を欲しがっている企業に出しにいきます。
あまりにひどい場合、私はたまにレジメ集配業者とか履歴書集配業者と呼んでいますが、ちょっと言いすぎでしょうか。
この種の会社はこの数年で急速に増えました。
企業側としては、例えば同じ業態でも、A社とB社では欲しい人材が違うはずなのですが、彼らは「はい、営業ね」という感じで「これどう?」と連れてくる。
会ってみると、どうも違う。
本物のヘッドハンターでなくても、多少とも職業倫理があれば、「こういう感じで東京の営業が任せられる人が欲しい」と頼まれれば、もう少し詳しく話を聞いて、雇う側と雇われる側の双方のイメージを考えるのが普通ですが、レジメ集配業者 は時間も手間もかけません。
雇う側も、数撃ちや当たるで、そのうちいいのが来るだろうと思っています。
あるいは時間とコストをかけるほど人材を大切に思っていない、その程度の企業なのかもしれません。
当然契約が成立しても、転職側にとっても雇う側にとっても、両方にとって不満な結果ヘッドハンタの世界になってしまうことも多いわけです。
初めからその日暮らしの感覚の人は別として、何かしらの志を持ったビジネスマンにはおすすめできません。
もう一つのヘッドハンターもどきの世界は若干薄暗いイメージ。
「あいつを取ってきてくれ」「へい、ょうがす」の世界。
ターゲットがわかったら、手段を選ばず、とりあえずそこに押し込めてしまう。
これは転がしてナンボの世界で、あまり上等でない会社とあまり上等でないヘッドハンターがやることです。
アジアの女の子に売春を斡旋するのと限りなく近い。
こういう、閣の世界も実際にあるのです。
私たちは失業した人を対象にしてはいませんが、たまにそういう方が接触を求めてくることがあります。
私がそういう人に言うことは、「信頼できる人以外には履歴書は渡してはいけません」ということです。
新聞などに立派な広告が出ていたりすると、雇用に関してはまるきり免疫のない、無垢な日本のビジネスマンたちは、そんなところにノコノコ行って、簡単に登録してしまいます。
そうするとそのレジメは何をやっているのか実体のわからないような会社にもバーッと撒かれてしまいます。
極端な言い方をすればパタヤからパンコックに出稼ぎに来たキャバレーの女の子が、いきなり並べられて、変なおじさんから、「あの二八番の子がいい」なんて言われて、ホテルに連れて行かれる世界と同じです。
こうした状況になっているのは、言い換えれば、それだけサラリーマンの流動化という社会全体のニーズが大きいのに、きちんとした人材市場がないからなのです。
私も少々怖い思いをしたことがあります。
アウトプレースメント会社というのをご存知ですか?私たちとは逆の業で、あちこちの会社から、「うちではもういらない」という人の履歴書を預かって、よその会社に紹介するのです。
もちろん、立派なアウトプレースメント会社もあるのですが、ここでは要注意の一例をお話します。
たまたま知人から、ある人がそういう会社を始めたからちょっと行ってくれないかと、頼まれて会いに行きました。
それで私はその人に、「これまで何をしていらしたんですか」「どんな件を扱っていらしたんですか」と聞きました。
この業界では当たり前の話です。
それが彼は途中から急に、ワーッと「初めて会った人間にそんなことを聞くのか」と、怒り出しました。
たぶん彼は若干の経歴詳称をしていたのでしょう。
急に怖いおじさん に変身したときは、正直私も怖かったです。
この業界、コワイ人は意外と多いのです。